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Infinite Flight ジェットエンジンについて

この記事はフライトシミュレーター用に筆者の自己流を紹介しています。実際の手順等とは異なる場合がありますのでご注意ください。

より詳細な記事を公開しました。

libayanel.hatenablog.com

今回はジェットエンジンの仕組みについて簡単に解説します。ジェットエンジンは後方からジェット(噴流)を出すことで推進力を得るエンジンです。詳しくはジェットエンジン Wikipediaをご覧ください。

Infinite Flightでは

以下の図のようにENGをタップすると自動的にエンジンがスタートします。簡単に見えますが、実はこの裏に色々な手順が隠されています。 f:id:libayanel:20190213225943p:plain

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ジェットエンジンの概要

現在よく使用されているのはターボファンエンジンというジェットエンジンです。これはファン部とコアエンジン部に別れています。ファン部で推力の大半を稼ぎ、コアエンジン部がファン部を駆動させます。ターボジェットエンジンターボファンエンジンからファン部をとってコアエンジン部だけの形です。(歴史的には逆なのでターボファンエンジンはターボジェットエンジンにファンを取り付けたものというのが正しい)

ターボファンエンジンの構成

空気は以下の順にエンジン内を通っていきます。ただし、ファンに流入した空気の一部はエンジンコア部(低圧コンプレッサー、高圧コンプレッサー、燃焼器、高圧タービン、低圧タービン)のルートに、残りはコア部を通らずバイパスされます(そのままエンジン後方から噴出される)。バイパスされた空気はジェット(噴流)となり飛行機を前に押す進める推力となります。(コア部から排出されるジェットももちろん推力元です)

  1. ファン (エンジンコア部に行く or バイパスされる)
  2. 低圧コンプレッサー
  3. 高圧コンプレッサー
  4. 燃焼器
  5. 高圧タービン
  6. 低圧タービン

さて、燃料を燃やす燃焼器があるのはわかりますがコンプレッサーやタービンはなんのためにあるのでしょうか。しかも高圧と低圧に分かれています。

低圧コンプレッサー

ジェットエンジンは燃焼器で燃料を燃やす事で最終的に推進力を得ます。そして空気は燃やす前、十分に圧縮されている必要があります。それをおこなうのが、コンプレッサー(圧縮機)です。コンプレッサーは複数のブレード(羽根)で成り立っていて、これを回す事で空気を圧縮します。低圧コンプレッサーでは流入空気を比較的低圧で圧縮します。エンジン内では低圧というだけであって、大気圧と比べると十分に高圧です。よくN1という用語を聞きますが、これは低圧コンプレッサーの回転数を指します(MAXを100%とした場合の回転数を%で表記)。多くは低圧コンプレッサーとファンは同軸なのでN1はファン回転数も示します。

高圧コンプレッサー

低圧コンプレッサーを通った空気を更に圧縮します。また低圧コンプレッサーと高圧コンプレッサーはそれぞれ独立した回転速度を持っています。この回転数がN2

燃焼器

燃料を噴射して燃焼させます。エンジン内で一番高温になる箇所です。燃焼器内には点火装置(イグナイター)があり、エンジン起動時に火花を散らす事で火をつけます(多分)。

高圧タービン

燃焼器直後の高温高圧ガスをタービンが受け回ります。要するに風車で風を多く受ければよく回ります。高圧タービン軸は高圧コンプレッサーとつながっており、これが高圧コンプレッサーの動力源となります。

低圧タービン

高圧タービンを通って圧力が下がったガスでタービンを回します。低圧タービンは低圧コンプレッサー、ファンと軸がつながっています。

軸のつながりをまとめると

  • 軸1 :ファン-低圧コンプレッサー - 低圧タービン = 回転数N1
  • 軸2 :高圧コンプレッサー - 高圧タービン = 回転数N2

Rolls-Royce

Rolls-Royceのエンジンは中間層を持っており段が一つ多いです。

  1. ファン (エンジンコア部に行く or バイパスされる)
  2. 低圧コンプレッサー
  3. 中間コンプレッサー
  4. 高圧コンプレッサー
  5. 燃焼器
  6. 高圧タービン
  7. 中間タービン
  8. 低圧タービン

軸は

  • 軸1 :ファン-低圧コンプレッサー - 低圧タービン = 回転数N1
  • 軸2 :中間コンプレッサー - 中間タービン = 回転数N2
  • 軸3 :高圧コンプレッサー - 高圧タービン = 回転数N3

エンジンスタート

先程、コンプレッサーの動力源は燃焼器のガス流で回るタービンと書きました。ん?エンジンが初めて動くときは燃料は燃えてませんからタービンもコンプレッサーも動いてません。でも、燃料を燃やすためにはコンプレッサーで空気を圧縮する必要があります。どうしてるのでしょうか? 答えは外部動力を使ってコンプレッサーを動かすことです。

エンジンスタート手順

  1. APU(Auxiliary Power Unit)という補助動力装置を起動して圧搾空気(BLEED AIR)を作ります。
  2. 圧搾空気をエンジン外周に取り付けられたニューマテック・スタータ(pneumatic starter)に送ります。ニューマテック・スタータは風車のような構造を持ち、空気を当てると回転します。
  3. ニューマテック・スタータの回転はシャフトを通して高圧コンプレッサー軸(N2)を直接回転させます。
  4. 高圧コンプレッサーが十分な回転になったら燃料に点火します。

まとめ

Infinite Flightでは何気なくエンジンスタートしていましたが、背後にはこんな動きがあるという紹介でした。エンジンスタート時は最も燃焼器に近いN2を、飛行時はファン回転数であるN1をチェックしている理由がわかりましたね。Infinite FlightではN2やEGT(排気ガス温度)はわからないため気にする必要はありませんが。ソースがWikipediaとかネットのため、間違い等あると思います。

備考

  • APUもタービンエンジンですが、こちらは電動モーターでコンプレッサーの初速を与えます。
  • ニューマチック・スタータは発電機などを含めた負荷伝達系をアクセサリーギアボックスと呼びます。アクセサリーギアボックスの位置はメーカーによって異なります。(調べた限り)
    • GE: エンジンコア部の下側にあります。
    • Rolls-Royce : ファン部の下側にあります。トルクはシャフトでコア部に伝わります。
  • 787のエンジンはニューマテック・スタータを使用せずモーターでコンプレッサーに初速を与えるそうです。