ultramarine sky

フライトシムを遊ぶ

航空機の高度/高さとは

航空機にとって現在の高度を知ることはとても重要です。しかし、この高度はいくつかの種類があり、使い分ける必要があります。今回はその使い分けをご紹介します。

東京タワーの高さ

東京タワーの高さが333mであることはご存じだと思います。東京タワーの根本からてっぺんまでの距離が333mということですね。では、富士山の高さはどれくらいでしょう?答えは3776mですが、これは地上からではなく海水面を0とした数値で標高とも呼ばれています。

航空機では多くの場合、”高度”は海水面から高さを示し、Altitudeという単語を使います。一方、”高さ”は、地上からの高さを示しHeightという単語を使います。

高度計

航空機はどのようにして高度を測定しているのでしょう? 航空機が上昇するにつれて気圧は下がっていきます。そのときの気圧を読み取る事ができれば高度に変換できます。読み取る装置を気圧高度計、その高度を気圧高度といいます。気圧高度計は気圧が低いほど高い高度を示します。しかし気圧は時間、場所によって一定ではありません。例えば羽田空港で気圧が高い日はいつもより高度が低く見え、逆に気圧が低い時は高度が高く見えてしまいます。それでは困るので気圧計を補正する必要があります。

高度計規正値

高度計は基準となる高度0における気圧を高度計に設定し補正することができます。設定方法は主にQNH セッティングとQNEセッティングの2種類あります(他にQFEセッティングがあります)。設定するときの気圧の単位はヘクトパスカル[hPa]または水銀柱インチ[inHg]で表します。

QNHセッティング

その空港の標高と高度計の高度が等しくなる時に対応する高度0の気圧を高度計にセットします。例えばある日、高度0における気圧が1013hPaであり、次の日は1010hPaだったとします。見かけ上、気圧は下がっているので、高度は上がっているように見えますがそんな訳はありません。この日は1010hPaを高度0とすると決めて置くことが必要です。このようにその時、その地域の気圧を測定し、高度0時点の気圧を基準として気圧計に設定すると、正確な高度を測定することができます。空港は定期的に、QNH値(高度0における気圧)を周囲を飛んでいる航空機に通知して、パイロットは高度計に設定します。日本では14000ft未満を飛行している場合QNHセッティングをしなければいけません。高度が低い場合は地上との衝突を避けるためQNHセッティングで高度計が正しい高度を示すようにします。

QNEセッティング

国際標準大気の通り1013.2hPa(29.92inHg)を高度0の気圧として固定します。QNEセッティングは高度0の気圧を固定しているため、本当の高度は求められません。しかし、高度が高い場合は、全ての航空機がQNEセッティングを行ない、異なる気圧高度を飛べば衝突などの危険性はないため問題ではありません。日本では14000ft以上を飛行する場合、QNEセッティングにします。

フライトレベル (Flight Level:FL)

QNEセッティングの場合の高度をフライトレベルと呼びます。29000ftの事をFL290というように100ft単位で計算します。

対地高度 (Above Ground Level:AGL)

対地高度とは地上からの高さの事です。たとえば、標高1000ftの陸地上空を気圧高度3000ftで飛んでいたら、対地高度は3000-1000=2000ftになります。対地高度は気圧高度計では測定できませんから、電波高度計(Radar Altimeterまたは Radio Altimeter:RA)を使います。電波を地面に向けて照射し、反射して帰ってくるまでの時間を測定し距離を割り出します。

フライトシムでどう使う

高度について筆者がフライトシムで行っていることをご紹介します。

1. 離陸前

  1. FMSに巡航高度をフライトレベルで入力する。(例:FL310)
  2. QNH値を出発する空港から入手し高度計にセットする。(例:Q1012が通知されたら1012hPAと入力する。ヘクトパスカル[hPa]か水銀柱インチ[inHg]の少なくとも一方が通知されます。航空機はどちらの単位でも入力できるようになっています)

2. 上昇中

高度が14000ft以上になったらQNH値を1013hPA(国際標準大気)にする。

3. 降下中

高度が14000ft未満になったらその地域のQNH値を問い合わせ、高度計にセットする

4. 着陸空港に近づいて来たら

空港にQNH値を問い合わせ、高度計にセットする

5. アプローチ〜着陸

ILS CAT II以上の場合電波高度による決心高(Decision Height:DH)を用いる。