フライトシミュレーターで使える航法術(VOR, INS)
フライトプランを作成する時、どのように航法方式を使用するでしょうか。 筆者は専らFMS頼りで、空港コード、SID、空路、ウェイポイント、STAR、アプローチを入力してあとはオートパイロットに誘導してもらうことが多いです。今回はGPSを使用しないVORとINSを使った航法の基本的手法を紹介します。
ブリーフィング
松本空港のRWY36から離陸し、松本VOR(MBE)の方位289に飛行する方式を、VORを使用した航法とINSを使用した航法の二通りで説明します(図中の矢印の方向)。なおその延長線上にウェイポイントYARIIがあるものとします。
画像はskyvectorより。
出発空港 | RJAF |
---|---|
松本VOR(MBE)周波数 | 117.6 |
YARII座標 | N36 16.18, E137 12.69 |
VOR
VORと呼ばれる無線施設から出された信号を頼りに飛行します。これを利用するとVOR局に対して指定した方位で進入できます。
例えばあるVOR局を方位090で通過したい場合、NAV1にVOR周波数を設定し、VOR指示器のコースを090に設定します。VOR指示器には左右に動く縦の針があり、自機から見てVORが左右のどちらにあるかを示します。自機の左側にVORがある場合は針は左に振れ、右側にあるときは右に振れます。針が真ん中に来るように航空機を調整します。針が右に振れている(自機の右側にVORがある)場合、まず方位270に飛行し、針が真ん中に近づいたところで方位090に旋回すれば針は真ん中に来るはずです。
また、VOR指示器には自機の前方にVOR局があるか(TO)、自機の後方にVORがあるか(FROM)示すTO/FROMインディケータというものがあります。 上記の例ではVOR局通過後にTOからFROMに表示が切り替わります。
X-Plane11のデフォルト機体であるCessna172を例に説明します。cold & darkからの始動方法は省略します。
1. 方位指示器の調整
静止した状態で、機種の向いている方位359を確認します。
方位指示器のつまみを回し方位を359に合わせ初期設定します。正確には無理なので大体で良いです。磁気コンパスはコックピットの中央にあり、低高度で静止状態(加速度がかかっていない状態)であれば正確な方位ですが、旋回した場合は誤差がでます。一方この方位指示器は磁気コンパスのように、最初から正しい方位を示しませんが、旋回した場合でも正確に方位を刻むことができます。これは別名Directional Gyroとも呼ばれジャイロを使用しています。
2. NAV1周波数の設定
右のG530に移動してPUSH C/V
ボタンを押し、VLOC 1
にカーソルを移動させます。これがNAV1ラジオの設定画面です。
PUSH C/V
ボタンの内側と外側のつまみを回してスタンバイ周波数を松本VORである117.60
に合わせます。
V <->
ボタンで入力した周波数を有効化します。スタンバイ周波数を上に持っていき有効化します。
VOR指示器のOBS
つまみを回して方位289
に合わせ、上の表示がNAV
になっていることを確認します。
3. 離陸 !
RWY36から離陸後、VORを見ると上記のように縦棒が左にずれています。これはVORが自機の左側にあることを示しています。左側に行くために方位222
に向けて飛行しています。
しばらくするとVORの縦棒が真ん中に来るので、そのタイミングで方位289
に旋回します。すると松本VORの方位289
方向に飛行する事ができました。
そして次のVOR局の周波数とコースを入力することで、VOR局を経由して飛行することができます、
VORの詳しい説明はこちら www.cfijapan.com
INS (Inertial Navigation System : 慣性航法装置)
INSは飛行したいポイントを座標で入力して飛行します。このように書くとGPSっぽいですがGPS衛星は使用しません。まず航空機を動かす前に現在地位の座標をINSに入力し、初期化します。そして行きたいポイントの座標を入力していきます。INSには3次元の加速度を検知するセンサーが組み込まれており、それによって自機が現在座標からどれだけ動いたががわかります。INSと似たシステムにIRS(Inertial Reference System : 慣性基準装置)というものがあります。INSはジャイロ装置と航法を組み合わせたものです、一方IRSはジャイロ装置のみを持ち、航法はFMS(Flight Management System : 飛行管理装置)が担当します。現在の旅客機ではIRSが主に使われています。
X-Plane11でFlyJSim 727とCIVA-INSを例に説明します。(FlyJSim727だけだとINSが付属していないため、別途CIVA-INSを購入してあります)
1. 座標表示機能を有効化する
Data Output
から20 Latitude, longitude, & altitude
をShow in Cookpit
で有効化します。このようにすると航空機の現在座標が求まりますので、INSの初期化に使用します。(現実では空港のスポット座標は予めわかっているのでそちらを参照します)
2. 現在座標を求める
右上からlat
が緯度, lon
が経度を示しています。
現在座標 (DD形式)
緯度 | 経度 |
---|---|
N36.158 | E137.92 |
INSへの入力はDM形式に変換する必要があるので、以下のサイトから変換します。
上記のようにDecimal Degrees
に値を入力しConvert
を押し、DM.m
に書かれた値がDM形式です。度の次の値は2桁なので9
-> 09
のようにゼロ埋めし、少数第2位を四捨五入します。
現在座標 (DM形式)
緯度 | 経度 |
---|---|
N36 09.5 | E137 55.2 |
3. INSへの入力
INSの説明は以下も参照してください。 libayanel.hatenablog.com
これがINSです。これまでに727のAPUを起動させ、電力を確保しておいてください。
データセレクタ:DSRTK/STS
にした後、モードセレクタ:STBY
にセットします。
データセレクタ:POS
にした後、2
を最初に押し北緯を選択後、現在座標の緯度N36 09.5
を入力します。入力完了後、INSERT
ボタンで挿入します。
6
を最初に押し東経を選択後、現在座標の経度E137 55.2
を入力します。入力完了後、INSERT
ボタンで挿入します。
データセレクタ:DSRTK/STS
にした後、モードセレクタ:ALIGN
に設定します。最後にREADY
ボタンを押し、アラインを完了させます。
YARII座標 (DM形式)
緯度 | 経度 |
---|---|
N36 16.2 | E137 12.7 |
データセレクタ:WPT
にした後、ウェイポイントセレクタ:1
にします。ウェイポイントセレクタは図中の丸を押すとカウントアップされます。そして先程と同じ要領でYARRIの座標(N36 16.2
, E137 12.7
)を入力します。更に座標を入力する場合はウェイポイントセレクタをカウントアップさせ2
, 3
, 4
, ... 9
まで入力できます。また、飛行中に使い終わった番号は再利用できます。例えば70個ウェイポイントがある場合は、その都度パイロットが座標を入力する必要がありました。
最後にモードセレクタ:NAV
にして設定完了です。
4. 離陸 !
さて、エンジンをスタートさせ離陸準備が整ったものとします。
図のようにMODE SELECTOR
をNAV/LOC
、NAV SOURCE
をGPS
となるように設定します。
MODE SELECTOR
: NAV/LOC
NAV SOURCE
: GPS
: ナビゲーションソースをNAV(無線標識)か、GPS(外部誘導)か選択
離陸直後です。HISを見るとYARRIの方位は時期から見て左後ろなのでそちらに旋回します。今回はオートパイロットを使って誘導します。
AUTO-PILOT
をENGAGED
、NAV SELECTOR
をAUX NAV
に設定しオートパイロットを有効化します。
AUTO-PILOT
: ENGAGED
: オートパイロットをON、OFFの場合でもフライトディレクタは誘導してくれる。
NAV SELECTOR
: AUX NAV
: 外部ナビゲーション(CIVA-INS)を使用を選択
YARIIに向けて誘導されます。
少し誤差はありますがコースに乗れました。
ウェイポイントを更に入力してあれば、更に誘導してくれます。