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フライトシムを遊ぶ

フライトシミュレーターで使える航法術(VOR, INS)

フライトプランを作成する時、どのように航法方式を使用するでしょうか。 筆者は専らFMS頼りで、空港コード、SID、空路、ウェイポイント、STAR、アプローチを入力してあとはオートパイロットに誘導してもらうことが多いです。今回はGPSを使用しないVORとINSを使った航法の基本的手法を紹介します。

ブリーフィング

f:id:libayanel:20200510112619p:plain f:id:libayanel:20200510112820p:plain

松本空港のRWY36から離陸し、松本VOR(MBE)の方位289に飛行する方式を、VORを使用した航法とINSを使用した航法の二通りで説明します(図中の矢印の方向)。なおその延長線上にウェイポイントYARIIがあるものとします。

画像はskyvectorより。

出発空港 RJAF
松本VOR(MBE)周波数 117.6
YARII座標 N36 16.18, E137 12.69

VOR

VORと呼ばれる無線施設から出された信号を頼りに飛行します。これを利用するとVOR局に対して指定した方位で進入できます。

例えばあるVOR局を方位090で通過したい場合、NAV1にVOR周波数を設定し、VOR指示器のコースを090に設定します。VOR指示器には左右に動く縦の針があり、自機から見てVORが左右のどちらにあるかを示します。自機の左側にVORがある場合は針は左に振れ、右側にあるときは右に振れます。針が真ん中に来るように航空機を調整します。針が右に振れている(自機の右側にVORがある)場合、まず方位270に飛行し、針が真ん中に近づいたところで方位090に旋回すれば針は真ん中に来るはずです。

また、VOR指示器には自機の前方にVOR局があるか(TO)、自機の後方にVORがあるか(FROM)示すTO/FROMインディケータというものがあります。 上記の例ではVOR局通過後にTOからFROMに表示が切り替わります。

X-Plane11のデフォルト機体であるCessna172を例に説明します。cold & darkからの始動方法は省略します。

1. 方位指示器の調整

f:id:libayanel:20200510112846p:plain 静止した状態で、機種の向いている方位359を確認します。

f:id:libayanel:20200510112909p:plain 方位指示器のつまみを回し方位を359に合わせ初期設定します。正確には無理なので大体で良いです。磁気コンパスはコックピットの中央にあり、低高度で静止状態(加速度がかかっていない状態)であれば正確な方位ですが、旋回した場合は誤差がでます。一方この方位指示器は磁気コンパスのように、最初から正しい方位を示しませんが、旋回した場合でも正確に方位を刻むことができます。これは別名Directional Gyroとも呼ばれジャイロを使用しています。

2. NAV1周波数の設定

f:id:libayanel:20200510112928p:plain 右のG530に移動してPUSH C/Vボタンを押し、VLOC 1にカーソルを移動させます。これがNAV1ラジオの設定画面です。

f:id:libayanel:20200510112945p:plain PUSH C/Vボタンの内側と外側のつまみを回してスタンバイ周波数を松本VORである117.60に合わせます。

f:id:libayanel:20200510113004p:plain V <->ボタンで入力した周波数を有効化します。スタンバイ周波数を上に持っていき有効化します。

f:id:libayanel:20200510113038p:plain VOR指示器のOBSつまみを回して方位289に合わせ、上の表示がNAVになっていることを確認します。

3. 離陸 !

f:id:libayanel:20200510113058p:plain f:id:libayanel:20200510113115p:plain RWY36から離陸後、VORを見ると上記のように縦棒が左にずれています。これはVORが自機の左側にあることを示しています。左側に行くために方位222に向けて飛行しています。

f:id:libayanel:20200510113131p:plain f:id:libayanel:20200510113155p:plain しばらくするとVORの縦棒が真ん中に来るので、そのタイミングで方位289に旋回します。すると松本VORの方位289方向に飛行する事ができました。

そして次のVOR局の周波数とコースを入力することで、VOR局を経由して飛行することができます、

VORの詳しい説明はこちら www.cfijapan.com

INS (Inertial Navigation System : 慣性航法装置)

INSは飛行したいポイントを座標で入力して飛行します。このように書くとGPSっぽいですがGPS衛星は使用しません。まず航空機を動かす前に現在地位の座標をINSに入力し、初期化します。そして行きたいポイントの座標を入力していきます。INSには3次元の加速度を検知するセンサーが組み込まれており、それによって自機が現在座標からどれだけ動いたががわかります。INSと似たシステムにIRS(Inertial Reference System : 慣性基準装置)というものがあります。INSはジャイロ装置と航法を組み合わせたものです、一方IRSはジャイロ装置のみを持ち、航法はFMS(Flight Management System : 飛行管理装置)が担当します。現在の旅客機ではIRSが主に使われています。

X-Plane11でFlyJSim 727とCIVA-INSを例に説明します。(FlyJSim727だけだとINSが付属していないため、別途CIVA-INSを購入してあります)

1. 座標表示機能を有効化する

f:id:libayanel:20200510113251p:plain Data Outputから20 Latitude, longitude, & altitudeShow in Cookpitで有効化します。このようにすると航空機の現在座標が求まりますので、INSの初期化に使用します。(現実では空港のスポット座標は予めわかっているのでそちらを参照します)

2. 現在座標を求める

f:id:libayanel:20200510113314p:plain 右上からlatが緯度, lonが経度を示しています。

現在座標 (DD形式)

緯度 経度
N36.158 E137.92

INSへの入力はDM形式に変換する必要があるので、以下のサイトから変換します。

www.directionsmag.com

f:id:libayanel:20200510113333p:plain f:id:libayanel:20200510113345p:plain

上記のようにDecimal Degreesに値を入力しConvertを押し、DM.mに書かれた値がDM形式です。度の次の値は2桁なので9 -> 09のようにゼロ埋めし、少数第2位を四捨五入します。

現在座標 (DM形式)

緯度 経度
N36 09.5 E137 55.2

3. INSへの入力

INSの説明は以下も参照してください。 libayanel.hatenablog.com

f:id:libayanel:20200510113406p:plain
これがINSです。これまでに727のAPUを起動させ、電力を確保しておいてください。

f:id:libayanel:20200510113459p:plain
データセレクタ:DSRTK/STSにした後、モードセレクタ:STBYにセットします。

f:id:libayanel:20200510113514p:plain
データセレクタ:POSにした後、2を最初に押し北緯を選択後、現在座標の緯度N36 09.5を入力します。入力完了後、INSERTボタンで挿入します。

f:id:libayanel:20200510113529p:plain
6を最初に押し東経を選択後、現在座標の経度E137 55.2を入力します。入力完了後、INSERTボタンで挿入します。

f:id:libayanel:20200510113546p:plain
データセレクタ:DSRTK/STSにした後、モードセレクタ:ALIGNに設定します。最後にREADYボタンを押し、アラインを完了させます。

f:id:libayanel:20200510113611p:plain

YARII座標 (DM形式)

緯度 経度
N36 16.2 E137 12.7

データセレクタ:WPTにした後、ウェイポイントセレクタ:1にします。ウェイポイントセレクタは図中の丸を押すとカウントアップされます。そして先程と同じ要領でYARRIの座標(N36 16.2, E137 12.7)を入力します。更に座標を入力する場合はウェイポイントセレクタをカウントアップさせ2, 3, 4, ... 9まで入力できます。また、飛行中に使い終わった番号は再利用できます。例えば70個ウェイポイントがある場合は、その都度パイロットが座標を入力する必要がありました。

f:id:libayanel:20200510113627p:plain 最後にモードセレクタ:NAVにして設定完了です。

4. 離陸 !

さて、エンジンをスタートさせ離陸準備が整ったものとします。

f:id:libayanel:20200510113650p:plain 図のようにMODE SELECTORNAV/LOCNAV SOURCEGPSとなるように設定します。

MODE SELECTOR : NAV/LOC NAV SOURCE : GPS : ナビゲーションソースをNAV(無線標識)か、GPS(外部誘導)か選択

f:id:libayanel:20200510113735p:plain 離陸直後です。HISを見るとYARRIの方位は時期から見て左後ろなのでそちらに旋回します。今回はオートパイロットを使って誘導します。

f:id:libayanel:20200510113754p:plain AUTO-PILOTENGAGEDNAV SELECTORAUX NAVに設定しオートパイロットを有効化します。

AUTO-PILOT: ENGAGED : オートパイロットをON、OFFの場合でもフライトディレクタは誘導してくれる。 NAV SELECTOR : AUX NAV : 外部ナビゲーション(CIVA-INS)を使用を選択

f:id:libayanel:20200510113817p:plain f:id:libayanel:20200510113832p:plain YARIIに向けて誘導されます。

f:id:libayanel:20200510113854p:plain f:id:libayanel:20200510113910p:plain 少し誤差はありますがコースに乗れました。 ウェイポイントを更に入力してあれば、更に誘導してくれます。